2011/09/20 の dcmodel ネットミーティングのメモ書き
参加者
- 北大
- 石渡 正樹, 杉山 耕一郎, 山下達也, 荻原 弘尭, 川畑 拓也
- 神戸大
- 高橋 芳幸, 納多 哲史, 井谷 優花, 黒田 美紀, 河合佑太, 高橋 由実子
- 九大
- 中島 健介
次回日程
- 日時
- 2010/10/04 (火) 13:00-14:30
- 場所
- 神戸大 : 自然科学 3 号館 508
- 神戸大 : ポートアイランド 3 階サロン
- 北大 : 理学部 8 号館コスモスタジオ
- 九大 : 理学部 3 号館 3605
IGModel プロジェクト進行状況 (河合)
- コードを Fortran 2003 から Fortran90/95 に書き換えた.
- Fortran 2003 でしか使えなかった機能があったのでは? (例えば継承など) (石渡)
- Fortran 90/95 による object based programing に書き換えた.
- Fortran 90/95 で実現できる部分は, 従来の手続き型プログラミングで書いた.
- Fortran 2003 でしか使えなかった機能があったのでは? (例えば継承など) (石渡)
- 3 次元のデータ構造を実装した.
- 格子・物理場データを格納するための既存の 2 次元データ構造を基にした.
- 格子・物理場データに関して, 3 次元が取り扱えるようになった.
- 既存の 2 次元格子・物理場データのための構造体を, 3 次元用の構造体の要素として取り込んで, 入れ子にした.
- 計算が遅くなること (構造型を用いることによるオーバヘッド) が心配.
- 構造体をやりとりするプログラムは分かりにくい. (高橋(芳))
- これから開発していく 3 次元非静力学モデルと, 今ある 2 次元浅水モデルの関係は? (コードの顔つきは変わるか) (中島)
- 支配方程式は違うが, (ベースライブラリを用いるので) 使用するデータ型, 手続きの慣用はあまり変わらない.
- コードの見た目としては大方鉛直次元が増えるだけ.
- 支配方程式は違うが, (ベースライブラリを用いるので) 使用するデータ型, 手続きの慣用はあまり変わらない.
- ブラックボックスに入れ過ぎると, どこが間違っているかがわからなくなったり他の人が拡張する際に困るのではないか (中島)
- 数値モデルの補助ツール (構造格子上への補間ツール等) も, 3 次元 (4 次元 (時間, 空間 3 次元)) データに対応させた.
- 地形に沿った座標系におけるメトリックを計算するモジュールを実装した.
- G^{1/2}, G^Z
- 変数名, モジュール名の付け方を改正, コード整理を行っている.
- 名前空間の整理. コードリファクタリング.
- 浅水モデルの予報変数の変数名を, dcmodel の慣用に変更した.
- 一度コードを眺めた方が良いのでは? (石渡)
- FDEPS (11/28 - 12/2) のときに見る?
- (乾燥大気, 3 次元版の) モデルの骨子ができていればいいな.
- FDEPS (11/28 - 12/2) のときに見る?
deepconv 再編成 (杉山)
- デバッグ中
- どのバージョンを使うのがよいのか? (高橋(芳))
- CVS 版を使う方が良い
- 一つ大きなバグが見つかった
- margin の値が入っていなかった
deepconv における乱流混合について (高橋)
はじめに
- deepconv における乱流混合の定式化を再考した.
現在の deepconv の定式化
現在の deepconv では, 温位に対する (鉛直方向の) 乱流混合の項は下のように定式化されている
(\DP{\theta}{t})_vmix = -\DP{F_h}{z} F_h = -K_h \DP{\theta}{z} z > 0
-C_h|\Dvect{v}|(\theta_1 \pi_1 T_s) z = 0
- 大気の上端の話は置いておく
本来(?) の定式化
エネルギー保存と温位の式の導出過程を考慮すると, 本来は以下のような式になると考えられる.
(\DP{\theta}{t})_vmix = -1/(\pi \rho C_p) \DP{F_h}{z} F_h = -(\pi \rho C_p K_h \DP{\theta}{z} z > 0
-\pi \rho C_p C_h|v|(\theta_1 - \theta_s) z = 0
今後の方針
以下の点を考慮し, 当面は下の定式化を用いることにする (少なくとも自分は)
- 平均場のエネルギーと乱流運動エネルギーとの交換.
- 実際にはあまりまじめに考えても仕方がないのかもしれない
- これまでの経緯.
- 要するに修正が面倒なだけという話もある.
(\DP{\theta}{t})_{vmix} = -\DP{F_h}{z} F_h = -K_h\DP{\theta}{z} z > 0
-C_h|\Dvect{v}|(\theta_1 - \theta_s) z = 0
- 平均場のエネルギーと乱流運動エネルギーとの交換.
まとめ
当面, 下のようにする
(\DP{\theta}{t})_{vmix} = -\DP{F_h}{z} F_h = -K_h\DP{\theta}{z} z > 0
-C_h|\Dvect{v}|(\theta_1 - \theta_s) z = 0
- 注意
- この時, F_h は熱フラックス (Wm^{-2}) ではない.
- モデルでの実装においては, 惑星表面におけるエクスナー関数の変動成分は大気最下層と同じと仮定する.
dcpam におけるサブグリッドスケールの混合過程・凝結・降水過程 (高橋(芳))
まとめ
- サブグリッドスケールの混合過程・凝結・降水過程に関して, dcpam の現状を概観した.
- それに基づき, 現在の dcpam のサブグリッドスケールの混合過程・凝結・降水過程の改善, または, 複数の選択肢の用意に向けて試行錯誤している.
- これまでに, 以下のことを行った.
- Relaxed Arakawa-Schubert スキーム (Moorthi and Suarez, 1992) の実装
- 概要については報告済み
- 鉛直乱流の修正
- Le Treut and Li (1991) による非対称性凝結 (大規模凝結の実装)
- テスト計算 (少しだけ)
- Relaxed Arakawa-Schubert スキーム (Moorthi and Suarez, 1992) の実装
- 今後テスト計算を継続する予定である.
現在の dcpam のサブグリッドスケールでの混合過程・凝結・降水過程
- 鉛直乱流混合
- Mellor and Yamada (1974, 1982) level2
- 温位を用いてリチャードソン数を計算
- Lous et al (1982) におけるバルク係数を用いた惑星
- Mellor and Yamada (1974, 1982) level2
- 積雲対流
- 湿潤対流調節 (Manbe, 1965)
- デフォルト閾値: 相対湿度 1
- AGCM5 では, 閾値を 0.99 として用いることが多かったようだ. それでいいのかどうか自分にはわからないのだが.
- デフォルト閾値: 相対湿度 1
- 湿潤対流調節 (Manbe, 1965)
- 非対流性凝結 (大規模凝結)
- Manabe (1965)
- デフォルト閾値: 相対湿度 1
- 現在の実装方法では, 相対湿度 1 未満では, 凝結量が負になっておかしなことになると思われる.
- デフォルト閾値: 相対湿度 1
- Manabe (1965)
試み
- 鉛直混合
- Mellor and Yamada (1974, 1982) level2
- 仮温位を用いてリチャードソン数を計算
- 空気と水蒸気の分子量の違いを考慮
- 仮温位を用いてリチャードソン数を計算
- Louis et al. (1982) によるバルク係数を用いた惑星表面フラックス評価
- Mellor and Yamada (1974, 1982) level2
- 湿潤対流
- Relaxed Arakawa-Schubert スキーム (Moorthi and Suarez, 1992) の導入
- アンサンブル平均としての積雲の大規模凝結への影響を, ある程度現実的な地球のそれに近づける
- Relaxed Arakawa-Schubert スキーム (Moorthi and Suarez, 1992) の導入
- 非対流性凝結 (大規模凝結)
- Le Treut and Li (1991) によるスキームの導入
- サブグリッドスケールの非一様性を考慮
- Le Treut and Li (1991) によるスキームの導入
補足
- モデルにおいてサブグリッドスケールの非一様性を考慮することがよいことかどうかはわからない... かもしれない
- 事実としては,
- 実際の (地球) 大気においては O(100 km) スケール (よくある我々の計算の格子間隔) において非一様性が存在
- ほとんどすべての大気モデルはそのような非一様性を考慮した計算法を採用
- しかし, サブグリッドスケールの非一様性を考慮することでモデルが現実的になる / 複雑化することが現実の理解の支障となる可能性もあるだろう
- ただし, 以下の点では意味があるだろう
- サブグリッドスケールの非一様性を考慮しないことがどの程度影響があるかどうかを評価する一つの方法となりうる
- 現実の大気との比較を含め定量的な議論を行いたい場合にも対応できるかもしれない
- いずれにしろ, 気に入らない人は使わなければ良い. モデルとしては選択肢がある方が望ましいのだろう. もちろん, 逆に簡単な定式化が気に入らないほtは自分が気に入るようにすればよいわけで, 選択肢がないとも思わない.
- 本当に正しくなるかわからないのによくなっていることが不思議 (石渡)
- サブグリッドスケールの非一様性を考慮すること自体に意味があると考えている
- 高分解モデルと大循環モデルの両方があるから, それぞれにフィードバックされることが期待される? (中島)
現状
- コードを書いた
- テスト計算を行っている
テスト計算概要 1
- 乱流今冬, 積雲対流, 比対流性凝結にそれぞれ二つの計算法を用いて感度実験を実施
- モデル
- 移流
- プリミティブ方程式系
- 水平: スペクトル変換法
- 鉛直: 差分法
- プリミティブ方程式系
- 放射
- 「地球大気用」放射モデル
- 乱流
- Mellor and Yamada (1992) level2 1. リチャードソン数を温位で計算 2. リチャードソン数を仮温位で計算
- バルク法 (Louis et al., 1982)
- 積雲対流 1. 湿潤対流調節 (Manabe, 1965) 2. Relaxed Arakawa-Schubert scheme (Moorthi and Suarez, 1992)
- 非対流性凝結 (大規模凝結) 1. Manabe (1965) 2. Le Treut and Li (1991)
- 移流
テスト計算概要 2
- 実験条件
- Neal and Hoskins (2001) によって提案された水惑星実験のうち "Control"
- 解像度
- T42L22
- 積分時間
- 5 年
- 後半の 3 年間の結果を解析に使用
結果
- 主に以下の 4 つの実験結果を紹介
- "DRi-MCA-M65"
- リチャードソン数を温位で計算
- 湿潤対流調節
- Manabe (1965) による非対称性凝結
- "MRi-MCA-M65"
- リチャードソン数を仮温位で計算
- 湿潤対流調節
- Manabe (1965) による非対称性凝結
- "MRi-RAS-M65"
- リチャードソン数を仮温位で計算
- Relaxed Arakawa-Schubert scheme
- Manabe (1965) による非対称性凝結
- "MRi-RAS-LL91"
- リチャードソン数を仮温位で計算
- Relaxed Arakawa-Schubert scheme
- Le Treut and Li (1991) による非対流性凝結
- "DRi-MCA-M65"
テスト計算 東西風
- 亜熱帯ジェットの強さが異なる
- 赤道のゼロ線の高さが異なる
テスト計算 赤道上の東西風
テスト計算結果 比湿
- DRi-MCA-M65 の方が MRi-MCA-M65 よりも低高度に固まっている
- 仮温位で計算すると, より不安定になるので鉛直方向に良く混ざる
- Moist Convective Ajustment の方が Relaxed Arakawa-Schubert よりも分布が広がっている
テスト計算結果 赤道上の比湿
- DRi-RAS-M65
- 温位でリチャードソン数を計算,
- MRi-RAS-M65
- 仮温位でリチャードソン数を計算して, Relaxed Arakawa-Schubert を使うすることによって, 比湿の分布がそれっぽくなった.
テスト計算結果 降水量
- Relaxed Arakawa- を使うと亜熱帯で雨が減る
- 大規模凝結で LL91 の方が雨が降りやすくなる
- この結果を Williamson の結果を比較すると, 雨が降り過ぎている
まとめ
- サブグリッドスケールの混合過程・凝結・降水過程に関して, dcpam の現状を概観した.
- それに基づき, 現在の dcpam のサブグリッドスケールの混合過程・凝結・降水過程の改善, または, 複数の選択肢の用意に向けて試行錯誤している.
- これまでに, 以下のことを行った.
- Relaxed Arakawa-Schubert スキーム (Moorthi and Suarez, 1992) の実装
- 概要については報告済み
- 鉛直乱流の修正
- Le Treut and Li (1991) による非対称性凝結 (大規模凝結の実装)
- Relaxed Arakawa-Schubert スキーム (Moorthi and Suarez, 1992) の実装
- テスト計算として水惑星実験を実施したところ, 東西平均場, 波の活動度などに, サブグリッドスケールパラメタリゼーションの影響が見られた. 個々の原因を理解するためにはさらなる解析が必要である.
今後と雑感
- 現在の自分の感触ではサブグリッドスケールのパラメタリゼーションとしては以下の組み合わせが良いと考えている.
- 鉛直乱流混合
- Mellor and Yamada (1984)
- バルク法 (Louis et al, 1982)
- 積雲対流
- Relaxed Arakawa-Schubert scheme (Moorthi and Suarez, 1992)
- 非対流制凝結 (大規模凝結)
- Manabe (1965)
- 鉛直乱流混合
- もちろん, 今の自分は上の組み合わせが良いと思っているが, それぞれの人は好きな計算法を使えばいいと思う.
- なお, 今回導入したパラメタリゼーションはチューニングの余地はある. それによって結果は変わるかもしれない.
- Le Treut and Li (1991) の非対流性凝結スキームを用いたときに亜熱帯の降水量が多いことは, 別の仮定が上手く表現できていないことを示唆するのかもしれない.
- また, 実装の詳細については, 他にも検討する余地はあるかもしれない.
- 今後. 地球条件でのテスト計算を行っていく予定.
- デフォルトの設定を変えるのはまだ先だと考えている
- 今は Flag を使って切り替えられるようにしている