ここではロスビー波をつかさどるもっとも単純な方程式を取り上げ,ロスビー波のイメージをつかむことにする.
系として 面上の2次元非発散系を考察する.支配方程式は次のように書きくだせる.
式1.1:
式1.2:
式1.3:
ただし ,
const. である*1.
[*1] この導出についてはシリーズ `2次元非圧縮流体の支配方程式'を参照せよ
基本場が である流れに対する線型化された擾乱の方程式は,
式1.4:
式1.5:
式1.6:
式1.1 より流れ関数,
を導入することができる.式1.4 〜 式1.6より渦度方程式を作ると
式1.7:
この方程式は, もともとのポテンシャル渦度保存則において,基本場のポテンシャル渦度を,擾乱のポテンシャル渦度は
,速度
とした場合に相当する.
特に のとき, 線型化された方程式は
式1.8:
式1.9:
式1.10:
また, 式1.7 は次のようになる.
式1.11:
分散関係式をもとめるために を一定とし,解として平面波の形
を支配方程式に代入し整理すると,
式1.12:
これが 2 次元非発散ロスビー波の分散関係である.
式1.13:
より, 位相は常に
軸負方向(西向き)に進む.
式1.14:
の波束は
軸正方向(東向き),
の波束は
軸負方向(西向き)にエネルギーを伝播する.
図1.1: 2次元非発散ロスビー波の分散関係( 面)
式1.12を変型することにより
式1.15:
const.である
を
面で表すと円になる(図1.2).また群速度は
面での
の gradient(
)であるから,その向きは式1.15の円の中心から円周上の点に向かう向きとなる.
図1.2: ロスビー波の分散関係 ( 面)
2 次元 面内に初期擾乱を与えたときの時間変化の計算例を図1.3に示す.与えられた擾乱がロスビー波として伝播し, 分散していく.図1.3
において下図のような位相と群速度の関係が見られる.
図1.3: 初期点擾乱を与えたときの流線の時間変化.トーンの塗り方は全て同じだが, 振幅の大きいところは塗っていない.